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僕たちの戦争

著者
[荻原浩]
出版社
[双葉社]
読了日
20061012

最近、ドラマ化されていたけれど、それは見ていない。

太平洋戦争当時の戦闘機乗りと、今時のお気軽サーファーとが、なぜか分からないけれども、入れ替わってしまう。それぞれがそれぞれの境遇に愕然としながらも、その境遇に少しずつ適応していく。

今時の感覚から言えば、国のために喜んで命を捨てようという同世代、もっと若い世代の思いが理解できず、それを推し進めようという体制が許せない。それでも、境遇を受け入れて特攻潜水艦の回転で出撃していく。

戦時中の感覚からすれば、物にあふれ、アメリカ文化におぼれた今の状況が分からない。父親(と彼にとっては名乗っている)大人が、いかにも子供っぽい。
そんな中でストイックな生き方を通しつつも、入れ替わった相手の恋人とのふれあいを楽しんで、現在に少しずつしみこんでいく。

現在では、自分が他の誰かと入れ替わってここにいることに気づき、自分が本来すでに死んでいる身ではあるが、入れ替わった時点は生きていたことに気づく。

戦時中では、入れ替わりを明確に意識することはできないものの、現在につながる人たちの存在を知る。

現在は過去からつながっていること、戦時中の不条理、現在の怠惰、そんな物を際だたせてくれる。もちろん、娯楽小説なのだから教訓などなくてもいいのかもしれないけれど、そういうものがあるからこそ染みいって、ぐいぐいと引き込まれてしまう。

そして、現在にやってきた彼は、自分の本来の世界に戻ろうと企て、そして...
この結末は、どちらに解釈すべきなのだろうか。